4セクション"Flexibel Music Education" クラシック・ジャズ・ミュージカル・音響デザイン

 

高等学校からのジャンル別特化教育の背景と意義

1)クラシック偏重は正しいのか?

バッハやベートーベン、モーツァルトといったクラシック音楽が、時を越えて心を揺さぶる偉大な価値を秘めていることに疑問の余地はありません。それら名曲の数々が、音楽理解の大きな幅を包括して感動を呼び起こす力を秘めていることを否定する者はいないでしょう。しかしながら翻って、音楽というものが、喜怒哀楽それぞれの心象心理に根ざした感情表現であることを見つめ直す時、クラシックを頂点と定める音楽の価値に対するヒエラルキーを今までのように是認し続けることに疑問を感じざるをえないこともまた確かです。
国際化に伴って、音楽の世界でも多様な音楽に対する見直しや、その視点に立脚した融合などの試みが始められていることはご存知のことと思われます。「なぜか心が浮き立つ」などの現実から、あるいは「より深く心象を掘り下げた」結果から、優劣で処理しえない多様な音楽への純粋な評価が個々に生まれてくることを否定できないはずです。
「もっと違う音楽を追求してみたい」という衝動を、教育の場が目をそむけ続けることは正しいのでしょうか? それはクラシックの決められたレベルに到達した先まで抑えなければならない欲求なのでしょうか?
より志向に沿った教育の場は、より大きな工夫や努力、より鮮やかな創造を実現する可能性を秘めています。クラシック音楽の世界で築き上げられた高度な技術や広いバリエーションを身につけながら、生徒それぞれが志向する音楽ジャンルの中で、それを個性的に結実させていきたいと私たちは考えています。

 

2)洗足学園音楽大学が生み出しつつあるもの

クラシック、ジャズ、ポップス、ミュージカル、邦楽等々、現在18ものコースを包括する洗足学園音楽大学の狙いは、様々な道筋からの一つの、あるいは複数の認知しえない頂点を目指す過程で生まれる、新たな創造の実現にあります。古典的音楽教育のルートでは引き出しえなかった才能、触発しえなかった工夫への発意が、多様な舞台の設定から生み出されることを期待してのものです。
他大学と一線を画するこの音楽教育路線を実施してから、まだ日の浅いものの、私たちはその教育の中から複数の明確な成果を検証しています。その最大のものは、学生の中に芽生えた主体性と独自性。学内でのコンサートやイベント、それ自体が大きく様変わりしてきたこともその表れに違いありませんが、そこでの表現や演奏に新たな創造へのエネルギーの一端を感じ取っています。学外へのチャレンジも多様に大きく広がってきています。クラシックだけに固執した古典的音楽教育では、生み出しえなかった成果です。
才能と志向の世界には、一般的な段階論は通用しません。その意味では、むしろ高校段階の教育にこそ多様性は求められているといえるでしょう。そしてその実現は、生徒たちのより大きな情熱と努力を引き出し、音楽の道における将来の可能性を大きく広げていくことにつながっていくものと確信しています。

 

3)志向性に合った教育が導き出す努力と輝き

想像してみてください、心から音楽に入り込んでイキイキと自分の音楽を奏でている生徒の様子を。舞台で歌い踊り演じる姿を。一定以上の練磨された者を対象として音楽の専門教育を行う本校では、音楽理論や演奏技術のレベルを無視した、単なる音楽を楽しむ場を提供するわけではありません。好まれることの少ない聴音や楽典、音楽史といった授業は、3年間びっしりと組み上げられていますし、クラシック音楽を基盤とした基礎力の養成にも力を抜くことはありません。それらは、どんな音楽を志す上でも、その音楽を練り上げ、俯瞰して自己検証していく上で、不可欠な要素となってくるからです。
私たちが期待しているのは、身に着けていく知識や技量が、志向に沿った音楽において柔軟に発揮され、応用されていく姿です。好きな音楽の、さらにその中でも大好きなジャンルの音楽の学び。古典的音楽教育だけでは実現しえなかった、それぞれの個性的な輝き、そして音楽に係わる多様な才がここから引き出されてくるはずです。

 

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